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東京高等裁判所 昭和46年(行コ)37号 判決 1973年3月16日

東京都台東区今戸二丁目三七番九号

控訴人

株式会社石黒建設

右代表者代表取締役

石黒源一郎

右訴訟代理人弁護士

萬谷亀吉

山下義則

東京都台東区蔵前二丁目八番一二号

被控訴人

浅草税務署長佐竹定美

右指定代理人

篠原一幸

月原進

加藤呂一

佐々木善春

右当事者間の昭和四六年(行コ)第三七号法人税課税更正決定取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原判決を取り消す。

被控訴人が控訴人に対し昭和三九年六月一五日付でした控訴人の昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度の法人税更正処分のうち、課税標準三一〇万〇、一〇〇円および税額につき右課税標準に対応する額をそれぞれ超える部分ならびに過少申告加算税の賦課決定のうち右税額と控訴人申告に係る税額との差額に対応する額を超える部分をいずれも取り消す。

控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを四分し、その三を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和三九年六月一五日付でした控訴人の昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度の法人税更正処分のうち審査裁決によつて維持された部分で確定申告額を超える部分および過少申告加算税の賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠関係は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

控訴代理人は、次のとおり述べた。

一、石倉健二、近藤源作名義の預金口座は、控訴会社設立以前から存在する石黒宇一郎個人の口座であり、又控訴会社設立に際しては、控訴会社が承継した債権債務と宇一郎個人に残した分との区別は、両者間に譲渡契約書(甲第一一号証)が作成され、明確にされている。さらに控訴会社においては係争事業年度の収入、支出については伝票処理を正確にしているのであつて、仮りに一件別の工事台帳がなく、また金銭出納帳の記帳が多少遅れても前記伝票その他の資料によつて控訴会社の収入および支出は充分正確に算定しうるのである。げんに昭和三九年一月二二日被控訴人の所部の調査担当者斉賀彦六が控訴会社の帳簿の調査をした際、現金出納帳が昭和三八年一〇月分から同年一二月分までつけていなかつたので入出金伝票によつて調査しているのである。従つてかかる場合には実額課税主義の原則に基づき課税すべきであつて、推計課税方式によることは許されない。

二、被控訴人は、AないしG社がその規模、業態等において控訴会社と類似法人であると主張するが、その選定基準は抽象的すぎ、果してその規模、業態等において控訴会社と具体的に類似するか否かは、被控訴人の主張によつても明らかでない。仮りに右基準をもつて選定する場合においても、右AないしG社以外に控訴会社と類似する法人があるとすれば、それを選定しない合理的理由がなければならない。しかるに右AないしG社の選定方法は極めて曖昧であり、少なくとも控訴会社と類似法人であると認められる基準および方法によつて選定されたものと認められる合理的な根拠はないものといわなければならない。

さらに右AないしG社相互間においても、また控訴会社との間においても類似性のないことは、控訴会社がすでに原審で述べたところであるが、かようにAないしG社の資本金、設備規模、事業年度、売上高、工事原価等いずれの点においても控訴会社と全く同一であるとはいえないのはもとより、その間に相当の開きがあることは否定しえない以上、右相当の開きの具体性の如何によつてはそのこと自体によつていわゆる類似法人としての類似性を喪失するものというべきである。

結局AないしG社の選定自体が恣意的なもので合理性はなく、さらにこれら七社と控訴会社との間には類似性はないのであるから、右AないしG社の平均総利益率を算出して、これを推計課税の方法ら用いることについては合理性がない。

三、被控訴人が推計課税に際し、控訴会社申告に係る係争事業年度の工事原価二、八二六万一、五三六円に控訴会社代表者個人のための工事の係争年度に係る原価分三一七万二、七五〇円を加算したのは、控訴会社の工事原価でないものを加算したもので不当である。右工事は、昭和三六年一二月下旬石黒源一郎が同人名義の東京都杉並区堀ノ内一丁目四六番地宅地四〇坪、建物三二坪が環状七号線工事のため強制買収され、その補償金六二一万七、五〇〇円をもつて東京都足立区下沼田町二二三番地に作業場兼寮を建築したもので、その費用は、六四〇万円であつた。しかして源一郎は、右六四〇万円を土地権利金一三二万三、六〇〇円を訴外宇田川平吉に支払つたほか、残額は下請および外注先に支払つているのであり、右六四〇万円は実費である。控訴会社が右工事費を支払つた事実は全くない。しこうして建築業は下請に依存する度合が極めて強く、控訴会社の設備を使用したことはなく、仮りに使用したとしてもその程度はとるに足らないものであり、又事実上の同族会社である控訴会社が設備使用の対価を受領しなかつたとしても、それをもつて工事が控訴会社の工事となるものではなく、さらに工事の材料の仕入先および外注先の一部が控訴会社と同一であつたとしても、その仕入および外注を控訴会社がなしていない以上控訴会社の工事となるものではない。

被控訴人指定代理人は、次のとおり述べた。

一、控訴会社は、その設立時において石黒宇一郎と控訴会社間の譲渡契約書(甲第一一号証)により両者間の財産区分は明確であると主張するが、右契約書は、真実の契約内容を記載したものか否か極めて疑わしく、少なくとも本件課税処分前に作成されたものでないことは明らかであるから(即ち、控訴会社は、被控訴人の所部の調査担当官の再三の要求にも拘らず、宇一郎から事業を引継いだ時点における財産目録の提示をせず、又本件審査請求について東京国税局長に提出した昭和四〇年三月二〇付説明書(甲第四号証)には、会社計算の正当性を主張するため「立証し得べき事項についてはでき得る限り証明を添付しました。」としているが、同書面末尾の証明書列記のなかには右契約書は入つておらず、従つて添付されていない。)、これを根拠として控訴会社が承継した分と宇一郎個人に残した分とを明確に区別することはできない。

控訴会社は、金銭出納帳が不備で、一件別の工事台帳がなくとも伝票により正確な所得の計算が可能であつたと主張する。ところが控訴会社は、正確な伝票を完備していなかつた。即ち、その総勘定元帳の売上勘定には記帳洩れがあるなど信用できなかつたのであるから、伝票についても当然売上除外の工作がなされた疑いが強い。従つて仮りの伝票が存在していたとしても、現存する伝票のみでは正確な所得の実額計算をすることは不可能である。

二、被控訴人は、合理的な選定基準により浅草税務署管内同業者四〇社中AないしG社を選んだもので、控訴会社とその規模、業態において右七社以上に類似する会社は他になく、被控訴人の選定は合理的なものである。

次に同業者率においてはその選定基準以外の点についてのある程度の開きは、その性質上当然に内在するものであり、同業者率について控訴会社と全く同一の事業内容の納税者を求めることは不可能に近いものである。本件の場合控訴会社の主張する相当の開きは、選定基準外の点についての開きであつて、それはAないしG社を類似法人として同業者率算出のための標本としての採用の妨げとはならないものである。

三、原判決事実摘示の「第三、被告の答弁」の項中原判決五枚目裏一〇、一一行目「前記工事原価二、八二六万一、五三六円」の次に「控訴会社がその代表者個人のために行なつている工事の係争事業年度に係る原価分三一七万二、七五〇円を加算した三、一四三万四、二八六円」を加える。

右控訴会社代表者個人のための工事は、控訴会社の行なつた工事であることは、次に述べるとおりであるから、これを工事原価に加算することは当然である。即ち、控訴会社は、その設立時においてたな卸材料、消耗機材、機械器具等の設備および使用人等の人的設備のすべてを宇一郎から引継ぎを受けたのであるから、右設備は、控訴会社に属するものである。右宇一郎と控訴会社との経理が明確に区分できないのであるから、経験則上控訴会社に属する右各設備を使用して行なつた工事は、すべて控訴会社の工事であると認めざるをえない。仮りに右工事が源一郎個人の工事とすれば、控訴会社は、その使用対価を源一郎から受領し、個人と法人との経済的利益の区分を明確に区分しなければならない。ところが控訴会社には右対価を受領した事実はなく、また右工事の材料の仕入先および外注先も控訴会社と同一であり、いずれが右工事の原価であるか明確に区分することはできない。よつて控訴会社に属する前記各設備を使用した工事のうち特に右工事だけを源一郎個人が行なつた工事とすることはできない。

証拠として、控訴代理人は、甲第一三号証の一、二を提出し、当審証人石応舛蔵、同中田敬蔵、同小林録四、同斉木守接同石黒宇一郎の各証言を援用し、乙第二〇、二一号証の各成立を認めると述べた。被控訴人指定代理人は、乙第二〇、二一号証を提出し、当審証人斉賀彦六の証言を援用し、甲第一三号証の一、二の成立はいずれも不知と述べた。

理由

一、控訴会社は、建設工事の請負を業とする株式会社であるが、係争事業年度の法人税につきその主張のごとき確定申告をしたところ、被控訴人が推計課税の方式によりその主張のごとき更正処分および加算税の賦課決定を行ない、その後東京国税局長の審査裁決によりその主張のごとく減額もしくは取り消されたことは、当事者間に争いがない。

二、まず推計課税の方法によつたことの適否について判断する。

いずれも成立に争いのない甲第二号証、乙第一五ないし第一八号証(第一六ないし第一八号証については原本の存在についても争いがない。)同第二〇、二一号証、原審証人石黒宇一郎の証言および原審における控訴会社代表者尋問の結果により成立が認められる甲第一一号証、原審および当審証人斉賀彦六、同斉木守接、同石黒宇一郎、当審証人小林録四の各証言、原審における控訴会社代表者尋問の結果(ただし原審および当審証人斉木守接、同石黒宇一郎の各証言、原審における控訴会社代表者尋問の結果中後記措信しない部分を除く。)によれば、

(1)  控訴会社は、その代表者石黒源一郎の父宇一郎が大正一二年頃から石黒建設工業所の商号で営んでいた建築業を昭和三六年八月二九日株式会社組織に改めて設立されたものであつて、右設立に際して、一部売掛債権を除き宇一郎の有していたたな卸材料、車輛運搬具、機械器具、債権債務の一切を承継し、そのため右両者間にその頃譲渡契約書(甲第一一号証)が作成された。

(2)  控訴会社の帳簿としては金銭出納帳、預金出納帳、総勘定元帳が備え付けられていたが、一件別工事台帳は作成されていなかつた。宇一郎の個人経営時代には帳簿を備え付けることがなく、会社組織になつてからも記帳の経験を有する者がなかつたので、当初の頃は顧問税理士斉木守接の指導を受け、控訴会社代表者又はその妻が伝票をつけ、それに基づき前記税理士事務所においてまとめて諸帳簿に記帳していた。ところがこれらの帳簿の売上勘定には記帳洩れがあり正確に記載されておらず、げんに昭和三九年一月二二日頃行なわれた被控訴人の所部の調査担当官の調査により請求書綴りのうち<秘>と印された綴りのなかには総勘定元帳の売上勘定に記帳されず、売上除外されているもののあることが発見され、控訴会社代表者は、右記帳洩れについて合理的な説明ができなかつた。又現金出納帳には約二ケ月の記帳洩れがあり、入出金伝票に基づいて調査日の現金残額を調べたところ、約一〇〇万円と計算されたので、現金在高の提示を求めたが、控訴会社代表者は直ちに提示することができず、後日にしてほしい旨を申出て、その翌日の調査の際ようやく現金一〇一万円を提示した。

(3)  さらに右売上除外をして記帳洩れとなつている控訴会社の取引先等から控訴会社あての小切手が原判決添付別紙一、二記載のとおり平和相互銀行浅草支店の石倉健二なる故人名義の普通預金と荒川信用金庫浅草支店の近藤源作なる故人名義の当座預金の各口座に入金されていることが判明した。右小切手中には宇一郎個人の施工に係る工事代金で会社設立に際して控訴会社に譲渡されなかつたもの等も含まれていることは否定できないものの、その金額を正確に確定することは困難であり、さらに右各口座には現金による入金もなされているので、これら各口座の入金額のうち幾何のものが控訴会社のものであり、又幾何のものが宇一郎個人に属する金額であるかを確定することは困難である。

(4)  控訴会社の係争事業年度の決算報告書の損益計算書によれば、総売上高三、二三一万三、九四九円、工事原価二、八二六万一、五三六円、売上総利益四〇五万二、四一三円であつて、総利益率は一二・五%となり、後記認定の被控訴人が工事総利益率を算定するために選定した浅草税務署管内の控訴会社と同規模の法人七社の総利益率、平均利益率(原判決添付別紙三記載のとおり)によれば、総利益率は一四・九%ないし二九・一%、平均総利益率は二〇・〇%であつて、これと比較すれば、前記控訴会社の総利益率一二・五%は著しく低率であり、控訴会社の決算報告書の作成を担当したその顧問税理士斉木守接も試算表作成の段階で利益が少ないことに疑問を感じ控訴会社代表者あるいはその会長の石黒宇一郎に売上脱漏がないか否かを二度にわたり確め、絶対にないとの回答により右決算書を作成し、被控訴人に提出した。同税理士は、その後において右決算書は、控訴会社の資料のみに基づいて作成したものの、もう少し損益で調べる工夫があつたら好都合であると考えていた。

以上の事実が認められ、原審および当審証人斉木守接、同石黒宇一郎の各証言、原審における控訴会社代表者尋問の結果中右認定に反する部分は、前記各証拠と対比して措信し難く、他に右認定を左右しうる証拠はない。もつとも控訴会社は、前記各小切手は、宇一郎がその賃貸地の名義書換料として受け取つたものもしくは控訴会社あるいは振出人の依頼により現金化したもので、すべて宇一郎の収入金であると主張し、甲第四号証、同第一二号証の各記載、原審証人石黒宇一郎の証言原審における控訴会社代表者尋問の結果中には右主張にそう趣旨の供述もしくは記載があるが、これらの供述もしくは記載は、前記各証拠と対比するとき全面的にこれを採用して前記認定を覆えすに足らない。

以上の認定事実によれば、控訴会社の営業用帳簿には少なくとも売上げにつき記帳洩れがあり、他にこれを補充して所得金額を明らかにする直接的資料もないことが認められるから、所得金額を推計により算出することもやむをえないというべきである。従つて被控訴人が控訴会社の係争事業年度の法人税につき実額調査によることなく、推計課税の方法によつたことは相当であつて、控訴会社主張のごとき瑕疵はない。

三、次に当裁判所も被控訴人の採用した推計の方法は合理的であると判断するものであつて、その理由は、原判決理由の説示(原判決九枚目裏二行目から同一〇枚目裏表七行目まで)と同一であるから、ここにこれを引用する。控訴会社は、右七社以外にも控訴会社と類似する法人があるとすればそれを選定しない合理的理由がなければならないと主張するが、かかる選定は無作為になされるのが合理的であつて、特定の意図をもつてなされたものでない限り、類似法人のなかから七社を選定し、あるいは他を選定しないことにつき特に合理的理由は要しないものというべきである。又これら七社相互間および控訴会社との間に資本金、設備規模、事業年度、売上高、工事原価等について相当の開きがあるのは、やむをえないところであるが、これらの開きが著しく、類似性を失わしめる程度のものであることを認めるに足る証拠もないから、この点に関する控訴会社の主張も理由がない。

四、被控訴人が前記推計の方法により控訴会社の所得を計算するに当つて、控訴会社申告に係る係争事業年度の工事原価二、八二六万一、五三六円に控訴会社代表者個人のための工事の係争事業年度分の工事原価三一七万二、七五〇円を加算したことは、当事者間に争いがない。控訴会社は、右代表者個人のための工事は、控訴会社の工事でないから、これを控訴会社の工事原価に加算するのは不当であると主張する。成立に争いのない乙第一九号証、原審証人斎木守接、原審および当審証人石黒宇一郎の各証言、原審における控訴会社代表尋問の結果によれば、右工事は、昭和三六年一二月頃、控訴会社代表者が個人名義の宅地、建物が環状七号線の工事のため買収された補償金をもつて足立区下沼田町二二三番地に作業場兼寮を建築し、その後控訴会社が木材倉庫として使用しているものであること、そして右工事は、宇一郎が控訴会社とは無関係に施工したもので、その費用約六三〇万九、〇五〇円は、土地権利金一三二万三、六〇〇円のほかはすべて下請および外注先に支払つたものであり、工事の実費であることが認められ、右認定を左右しうる証拠はない。してみれば右工事は、控訴会社の施工した工事ではないといわなければならない。被控訴人は、右工事には控訴会社の設備、人夫が使用されているに拘らず、その対価が支払われておらず、又その材料の支入先および外注先も控訴会社と同一であつて、いずれが右工事の原価であるか明確でないから、右工事だけを控訴会社の工事でないとすることはできないと主張するが、控訴会社の記帳された金額中右工事の材料費、外注に係る費用の幾何が含まれているか明確でないから、全額を加算すべきだとする被控訴人の主張自体合理性を欠くのみならず、前記乙第一九号証によれば、その工事原価は一応明確にされており、又仮りにその主張どおりであるとしても、これをもつて前記認定を覆えし、右工事を控訴会社の施工した工事であるということはできない。

従つて被控訴人の前記計算方法には控訴会社の工事原価でないものを加算した違法があるといわねばならない。

五、そこで控訴会社申告に係る係争事業年度の工事原価二、八二六万一、五三六円に基づき、これに控訴会社代表者個人のための工事の係争事業年度分の工事原価を加算せずして、前記認定の推計方法により計算するに、工事収入金額三、五三二万六、九三〇円、工事収入総利益七〇六万五、三八四円(純利益三四八万二、五四一円)となり、控訴会社の本件係争事業年度の法人税の課税標準は、三一〇万〇、一〇〇円となる。

そこで被控訴人のなした更正処分(ただし審査裁決により課税標準三八九万三、三六一円、税額一三六万五、二二〇円に減額された。)は、その課税標準は三一〇万〇、一〇〇円を、税額は右課税標準に対応する額をそれぞれ超える限度においていずれも違法であるから取消しを免れず、又被控訴人のなした過少申告加算税の賦課決定は、前記税額と控訴会社申告に係る税額との差額に対応する額を超える限度において取消しを免れない。従つて控訴会社の本訴請求は、被控訴人のなした更正処分のうち控訴会社の本件係争事業年度の法人税の課税標準三一〇万〇、一〇〇円、税額は右課税標準に対応する額をそれぞれ超える部分および過少申告加算税の賦課決定のうち右税額と控訴会社申告に係る税額との差額に対応する額を超える部分の取消しを求める限度において正当として認容すべく、その余は失当として棄却すべきである。

六、よつて右と判断を異にする原判決は、その限度において失当であるからこれを取り消し、前示の限度において本件更正処分および過少申告加算税の賦課決定の各一部を取り消し、本訴請求のその余の部分を棄却することとし、民事訴訟法第三八六条第九六条第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 小林定人 裁判官 関口文吉)

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